出版社作成の宣伝文句
『迦陵頻伽 奈良に誓う』を出版した会社ブイツーソリューションが、この本の宣伝文句として発信したものは、「古都の風景と歴史が紡ぐ、東と西、男と女、仕事と恋。」というものでした。
本の作者である私は宣伝文句作成に全く関与していなかったのですが、出版社さんは良く本の内容を捉えて下さっているなと思いました。
同じ思いだったのでしょうか、静岡県のある本屋さんはこの言葉を使ってPOP広告を手作りし、本を販売して下さっていました。
『奈良に誓う』と『萬世同薫』は合わせて1つ
『迦陵頻伽 奈良に誓う』は前半の『奈良に誓う』と後半の『萬世同薫』という2つの中編小説で成り立っています。
2つは一見別個のものであるように見えるのですが、同一主人公が登場し、唐招提寺と鑑真和上に関連して話が進行していくことからも分かりますように、両方合わせて1つのものです。
そして、後半の『萬世同薫』の方が時系列的には先にあたります。『萬世同薫』の最後に主人公が「赤膚焼の窯元へ寄ってくる」と母親に言うシーンがありますが、それが前半の『奈良に誓う』の第一章にある赤膚焼の場面に繋がっていきます。
作者が意図した縦軸と横軸
『奈良に誓う』と『萬世同薫』を書くときに私が意図しましたのは、小説の縦軸と横軸というものでした。
これはしばしば本の紹介で言われます「○○を縦糸に△△を横糸に織り成す物語」という意味ではなく、ビジネスの世界でものごとを分析するときに使う「時間軸と場所軸」というものです。
本に登場します人物を時間軸と場所軸で配置しますと、添付の表「風月同天と萬世同薫」のようになります。
歴史上の人物である鑑真和上、阿倍仲麻呂、覚盛上人、松尾芭蕉、森本長老、趙樸初会長等、および創作上の人物の永田副社長、槇野あずさ、橘貴一等が、時代と場所の違った枠内に入っているのが分かると思います。
作者のメッセージ
『奈良に誓う』と『萬世同薫』の最後の主な舞台は共に唐招提寺の鑑真和上の廟所です。唐招提寺は、鑑真和上が日本へ来る決心の元になった「風月同天」という言葉でよく語られます。
そして鑑真和上の廟所にある香炉には「萬世同薫」という言葉が彫られています。私が、これから二人で生きていく主人公のあずさと貴一に、およびその後も続く世代の人々に込めた思い、期待は次の通りです。
「ところは違っても同じ思いを持つ人がいて、時は変わっても同じように薫る」