きれいな瓊花
唐招提寺の御影堂の西側には供華園(くげえん)と呼ばれる薬草園があり、桜が終わって2週間ほど経つと瓊花(けいか)という花が咲きます。おおよそゴールデン・ウィークの直前から咲き始め約1週間が見頃で、その時期に合わせて供華園が特別公開されます。
瓊花は白い5弁の花びら、実は装飾花(ガク)が円を描くように8個並び、中央に小さな正常花が数多くあります。一見、アジサイに似ていますが、アジサイの装飾花が4弁であるのに対して瓊花は5弁です。8個の装飾花に囲まれて1つの花と見える瓊花は、大きさが大人の掌ぐらいで、香りがします。
供華園の瓊花は、沢山の緑の葉が人の背丈の二倍ほどの高さで茂り、横に連なって垣根となり、そこにビッシリと白い豪華な花が咲きます。満開のその様子は人を圧倒します。
中国揚州から来た瓊花
瓊花はもともと日本にあった花ではなく、中国から来たものです。かつて中国の皇帝が大変愛したこの名花は、鑑真和上の故郷揚州の大明寺に咲いていたもので、他ではほとんど見ることはできなかったそうです。あまり株分けがなされなかった花であり、他の土地に根付かせ育てることが難しい花でもあったためと思われます。
その瓊花が、鑑真和上の1200年忌を記念して1963(昭和38)年に中国仏教協会から唐招提寺へ贈られました。田中角栄首相と周恩来首相による日中国交正常化が1972(昭和47)年ですから、国交正常化前の難しい時期に瓊花が日本に初めて来たことになります。鑑真和上の偉大さ、日中の懸け橋としての功績がそれを可能にしたのだと思います。
供華園以外の唐招提寺の瓊花
唐招提寺には供華園の他に、瓊花が咲いている場所が2箇所あります。1つは供華園からすぐ近く、御影堂の前庭の南西です。そちらの庭には入って行けませんので、美しく手入れされた白砂の向うに遠く木と花を見る形になります。緑の葉に瓊花の白さがまばゆいです。
もう1つは鑑真和上の墓所の前です。墓所の前の瓊花は中国の趙紫陽首相が自ら植えたもので、幹の下の方に一輪の花が咲き、上方には何輪もの花が初夏の陽に映えていました。
唐招提寺以外の瓊花
唐招提寺の他に瓊花は日本のどこにあるのか調べてみました。私が実物を見たもの、写真等で存在を確信したもの、確認が取れなかったものなど含めて以下の通りでした。まだ他にもあるかもしれません。
@奈良市の東大寺勧進所
A奈良市の法華寺
B奈良県桜井市の三輪山
C奈良県明日香村の飛鳥寺
D奈良県の大峰山系
E京都府相楽郡精華町の京都府農業資源研究センター用圃場
(旧「花空間けいはんな」、元「京都フラワーセンター」)
F岐阜県関市の神薬才花苑
G東京都の皇居
H鹿児島県南さつま市坊津町秋目浦
I佐賀県佐賀市嘉瀬町
I佐賀県唐津市
それぞれの場所に本当に瓊花はあるのか、どのように瓊花が咲いているのか(すくすくと育っているのか)、植えられた経緯はどのようなものか、等々に関心を持って現地を訪ねてみたら、面白いかもしれませんね。私も順次、調査、訪問してみたいと思っています。