本『迦陵頻伽 奈良に誓う』の記述の間違い

本『迦陵頻伽 奈良に誓う』を書くにあたっては、事実をしっかり調べて書き、校正も念入りに行った積りですが、何人かの人に原稿を読んでいただいたら数多くの間違いを指摘されました。そしてこれで完全だと思って出版してからも、数カ所ミスのあることを自分で発見したり、人から教えられたりしました。中には、穴があったら入りたいという非常に恥ずかしい間違いもありました。以下、私の勉強不足や思い込みによる書き間違いを2回に分けて報告します。報告の1回目は原稿段階で指摘されたミスです。

原稿段階で指摘されたミス

原稿段階で指摘されたミスは多数あり、その性質も各種ありました。そんななかで特に印象深い指摘は、唐招提寺関係の間違いと運輸関係のミスです。前者はIさんから、後者はTさんから教えられました。

唐招提寺関係

①座像ではなく坐像

すわっている仏像は「座像」ではなく「坐像」と書くのが正しいとのことです。常用漢字では「座」に統一されていますが、もとは「坐」は動詞で「座」は名詞でした。仏像は昔からある名前として「坐像」が使われているようです。弥勒如来坐像や鑑真和上坐像など、唐招提寺の説明板には確かに「坐像」と記されていました。

②「桜と橘」ではなく「梅と橘」

唐招提寺御影堂の南庭に植えられている木は「桜と橘」ではなく「梅と橘」でした。私は、御影堂の建物が旧一乗院宸殿であったことや、御影堂には宸殿の間があることから、京都御所と同じく「左近の桜、右近の橘」と思っていました。しかし、御影堂は部屋から庭を見て左側が梅、右側が橘でした。この梅と橘の方が古い方式だそうです。

③「王義之」ではなく「王羲之」

書聖と呼ばれる書の名人「おうぎし」を私は当然のごとく「王義之」と書いていました。これは「王羲之」と書くのが正しいと指摘を受けました。私は恥ずかしいことですが、「羲」という漢字があることすら知りませんで、「ぎ」と言えば「義」という漢字しか思いつかなかった次第です。

運輸関係 

①近鉄電車の駅名

近鉄電車の駅名について指摘されたことは、「西大寺」は正式駅名ではなく「大和西大寺」が正しいということと、「橿原神宮」駅ではなく「橿原神宮前」が正しいということでした。確かに「西大寺」という駅は他にもありますから旧国名の大和を付けて大和西大寺というのが適切ですね。また、橿原神宮前駅に関しては有名な神宮の名前だけが駅名として頭に残ってしまい、正確な駅名を覚えていないのだということを認識させられました。

②奈良交通のバス停留所名

奈良交通の奈良市内循環バス(外回り)はJRや近鉄の奈良駅などから奈良国立博物館や有名な大仏殿前へ乗客を乗せて行ってくれます。正倉院展などを見学する時によく人が降りるバス停が「氷室神社・国立博物館」で、奈良の大仏を参拝する多くの人がバスを降りる停留所は「大仏殿春日大社前」です。「氷室神社・国立博物館」は「・」(なかぐろ)があり、「前」が付いていません。一方、「大仏殿春日大社前」は停留所名に「・」(なかぐろ)がなく、「前」が付いています。

このことを教えられ、私は微妙な違いに驚きました。バス停を降りてから歩く距離の差で「前」が付いたり付かなかったりするのでしょうが、ややこしいです。「・」(なかぐろ)の有無はどのような理由によるものか、分かりません。

そしてさらに分かりづらいのが、大仏殿や国立博物館から帰る時にバスに乗る停留所名です。来た時とは反対に内回りの奈良市内循環バスに乗るのですが、その時のバス停は「大仏殿春日大社前」でも「氷室神社・国立博物館」でもありません。「東大寺大仏殿・国立博物館」です。

つまり外回りのバス路線には「氷室神社・国立博物館」と「大仏殿春日大社前」という2つのバス停があり、「東大寺大仏殿・国立博物館」というバス停がありません。反対に、内回りのバス路線には「氷室神社・国立博物館」と「大仏殿春日大社前」という2つのバス停がなく、「東大寺大仏殿・国立博物館」というバス停が1つだけあるというわけです。

このようなことは余程バス路線に詳しい人でないと分からないと思いますが、本を書こうとした場合、これらのことについても間違えるわけにはいかないのだと、私は気持ちを引き締めた次第です。