本『迦陵頻伽 奈良に誓う』の記述の間違い

本『迦陵頻伽 奈良に誓う』の記述間違いの報告2回目は、本を出版した後で分かったミスについてです。これまでに7つの間違いを人から教えていただいたり自分で気づいたりして把握していますが、それらをミスの性格で分類しますと、次の通りです。

①校正漏れ・・・校正漏れによる文字の間違い

②編集ミス・・・編集過程でのコピーミスによる間違い

③無知・・・・・正しい文字を知らなかったための間違い

④原典尊重不足・・・原典の文字を正しく転記しなかったための間違い

⑤思い込み・・・間違っているのに、正しいと思い込んでいたための間違い

校正漏れ

本を正式に印刷する前に、一般にゲラ刷りというもので文字の間違いなどがないかチェックし手直しをします。このチェック手直しを校正と言うのですが、念入りに校正した積りでも、何カ所か漏れがあるものです。この校正漏れによる文字の間違いは次の通りです。

・僧として正式に認めることを、戒を授ける「授戒」と言います。多くは正しくこの「授戒」を書いているのですが、1カ所について受ける方の「受戒」と、間違って書いていることに気付きませんでした。

・1つの文の中で、読み易くするために、切れ目に読点「、」を書きますが、それが文の終わりを示す句点「。」になっていたことを見落としていました。

編集ミス

原稿を書き上げる過程では種々の書き直しや章の組み換えなどをよく行います。私はパソコンで原稿を書いていますため、書き直しや章の組み換えなどの時にカット・アンド・ペースト(切り取り・貼り付け)をします。その時に正しくコピーしていなかったために、元々は正しく書いていたものが間違い表記になってしまいました。

・甲賀市信楽から伊賀市の丸柱へ行く時の国道三〇七号線が、三七号線に変わってしまっていました。〇をコピー漏れしたために起こったミスです。この国道の表示ミスについては、龍谷大学の生涯学習講座に甲賀市から参加して下さった方が教えて下さいました。地元の人はやはり、その地域の地理に詳しいです。

無知

正しい文字を知らなかったための間違いです。これまで見たこともない文字は、そういう文字があることも気付かずに、他の似ている文字をその文字だと思ってしまいました。

・鑑真和上の墓石は正しくは「方篋印塔」と書くべきでしたのに、「方筐印塔」と書いていました。

原典尊重不足

原典の文字を正しく転記しなかったための間違いです。

・三波春夫さんが団扇撒きの団扇に書いた文「人は苦難を超えて真実に出逢う」を「人は苦難を越えて真実に出会う」と書いてしまいました。「超え」と「越え」は「こえる」という意味ではほぼ同じですが、「超え」には障害物をのりこえるという意味合いが、「越え」には枠をのりこえるという意味合いがあります。そのため、文の言わんとするところを考えますと、三波春夫さんが書かれている「超え」が良いのだと思います。

また、「逢う」は「両方から進んで来て一点であう」という意味合いがありますので、広く一般的に使われます「会う」よりも、これまた漢字の使い方として三波さんの「逢う」の方が文の意味に合っていると感じます。

原典の団扇の文字をしっかり転記すべきだったと反省しています。

・鑑真和上の墓所の玉垣に彫られています趙樸初さんの詩「巡展礼讃」を「巡展礼賛」と書いてしまいました。これはどちらでも良いように感じられますが、原典が「礼讃」という文字を使っていますこと、そして「讃」の字が「言葉をそろえてほめる」という元々の意味がありますから、「巡展礼讃」と書くべきでした。

思い込み

これは、間違っているのに、正しいと思い込んでいたための間違いです。

・「大和は 国のまほろば たたなづく青垣 ・・・」の歌を古代の歌ですから万葉集のものと思い込んでいて、本にもそう書いてしまったのです。よくよく考えてみれば、倭建命(やまとたけるのみこと)の歌ですから古事記に載っているものだと分かるはずなのですが、まったく気付きませんでした。

本のあとがきに書いたミスだったのですが、あとがきだからといって気を抜いたわけではないのです。念のために調べることをしませんでした。それほどまでに万葉集だと思い込んでいたためです。

奈良に詳しいTさんから教えられて、穴があったら入りたいと心底思ったミスでした。

訂正一覧表


119 15 国道三七号線 国道三〇七号線
320 4 「苦難を越えて人は真実に出会う」 「苦難を超えて人は真実に出逢う」
361 11 「僧に受戒を」 「僧に授戒を」
377 8 「そして。酒の・・・」 「そして、酒の・・・」
406 10 宝筐印塔 宝篋印塔
406 11 宝筐印塔 宝篋印塔
406 13 宝筐印塔 宝篋印塔
407 6 『巡展礼賛』 『巡展礼讃』
421 6 万葉集に歌われた 古事記に歌われた