唐招提寺の素晴らしいチャレンジ
唐招提寺は私のとても好きな寺です。しかし唐招提寺のファンであるだけに、これまでこの寺の公式ホームページがなかなか更新されないことを残念に思っていました。寺は、人の生き方に良い影響を与える教えなり実践活動なりを数多く発信していくべきだと思うからです。
ところが、今年の6月20日以降、しばしばホームページの「おしらせ」が更新されるようになり、境内の蓮の開花状況などがよく分かるようになりました。そして7月1日より、いま流行りのスマートフォンを使って、寺の案内をするということを始めました。私はこの取り組みは素晴らしいチャレンジだと思います。
さっそく唐招提寺でスマートフォンを借りて、その映像と音声を参考に境内を巡ってみました。
スマートフォンの感じの良い貸出係
南大門を入ってすぐの右手にスマートフォンの貸し出しコーナーがありました。貸出料金500円を払ってスマートフォンを借用しますと、年配の男性と女性のお二人がいて丁寧に使い方を説明してくれました。そして私が世界遺産の碑の近くでその最新機器をうまく使いこなせないでいますと、追いかけてきて操作方法を再度説明してくださったのです。
人への思いやり、思いやりを形にして実践すること、これこそが唐招提寺の開祖である鑑真和上が身命を賭して伝えて下さったものだと思いますが、それをスマートフォンの貸出係の人は自然に実行していたのです。良い人だなぁと思いました。
境内各所にあるスマートフォンガイド掲示板
唐招提寺境内の主な箇所には手頃な大きさの掲示板が立てられて、境内の地図と現在地、そして現在地近くの伽藍の説明を開始するためのARマーカーが描かれています。掲示板は、金堂その他の建物を良い雰囲気で拝観したり写真を撮ったりすることに支障が起きないよう、設置場所が配慮されていて少し脇の方になっています。
スマートフォンを使ってみての感想
最新IT機器を使って寺の案内をしようというチャレンジは本当に素晴らしいですが、実際にその機器を使ってみますと、現時点では少なからず問題があると感じました。以下、IT機器に詳しくない私の感想です。なお、唐招提寺のスマートフォンは一般に「アンドロイド・タブレット」と呼ばれているものでしょうか。ディスプレイがかなり大きなものです。
まずスマートフォンですから液晶で画像が表示されるのですが、境内を歩き伽藍等の説明を視聴しようと思いますと、周りの明るさのために画面があまりよく見えません。建物の中や木陰に入ると画面が見えました。
次に機器が高機能過ぎて簡単に使いこなせないのです。いろいろなアイコンがあってスマートフォンを使い慣れていない者にはどうしたら良いのか分かりません。そのため、触るべきでないタッチボタンまで触ってしまい、何度も最初に戻って操作しなければいけませんでした。また、タッチパネルが指でのタッチに感度高く反応しないという機器のハード上の問題もありました。お寺へ来る人には年配者が多いことを考えますと、操作の難しさは利用の足を引っ張るように思いました。一方では、IT機器に慣れている若い人には喜んで使っていただけるかもしれません。
機器がタブレットでかなり大きいため、機器のフレームにゴムバンドが付いています。ゴムバンドに手の平を差し込んで片手で機器を持ってガイド画面を見たり音声説明を聴いたりするのですが、20分もそうしていますと手が痛くなってきます。重たく感じるのです。
感想をまとめますと、①画面が見づらい、②機器操作が難しい(不慣れ)、③重いということです。
適切なガイドのあり方の追求を
唐招提寺の現地へ折角来ている参拝客に、わざわざ過去に撮った映像を見せる価値があるのだろうかと私は疑問に思いました。自分の目で現物をしっかり観ていただくのが良いとと考えます。そのためには各人が小さな機器で個別に音声ガイドを聴けるのがベストでしょう。そしてそれ以上のことを知りたい方には、休憩所や伽藍の一部の場所でスマートフォンかDVDなどを個別に視聴していただいたら良いと思います。
スマートフォンによる唐招提寺ガイドのARマーカー掲載掲示板にはQRコードも掲載されていて、携帯電話のカメラによる読み取りで携帯電話の画面に解説文が表示される機能もあります。文字表示を読みながら、唐招提寺の伽藍を歩くことになります。
私はちょっと古いかもしれませんが、これまで多くの博物館などで採用されている音声ガイドで十分なのではないかと思います。聴きたい対象物を認識するためだけにカメラの最新機能を使って、数字番号なりQRコードもしくはARマーカーなりを案内板から読み込み、音声ガイドを流して各人がイヤホーンで聴くという具合にしていただけたら有難いなぁと思いました。
唐招提寺が新しいことにチャレンジしたのですから、心からその取り組みを応援し今後の改善によるチャレンジの完成を祈っています。私のようなITに不慣れな者の場違い発言はこうすれば問題解決すると教えていただくと共に、多くの人が不都合を感じる事柄はスピーディに改善していっていただきたいと思います。