薬師寺の伽藍復興と写経
奈良・西ノ京にある薬師寺は1970年代以降に伽藍復興が次々と行われました。主なものだけあげても次の通りです。
@1976(昭和51)年 金堂落慶
A1981(昭和56)年 西塔落慶
B1984(昭和59)年 中門落慶
C1991(平成03)年 玄奘三蔵院伽藍落慶
D2000(平成12)年 大唐西域壁画完成
E2003(平成15)年 大講堂落慶
これらの伽藍復興に必要な資金は写経勧進という方法で集められました。一般市民が般若心経1巻を写経し、納経供養料(のうきょうくようりょう)として1000円を薬師寺に納めます。寺は再建される金堂内にその写経を収蔵するというものです。金堂の再建費用が10億円と見積もられていましたから、写経の材料費などの原価を仮に0円としても、10億円を割ることの1000円で100万巻の写経が必要となります。
しかし薬師寺が偉かったのはこのような金額計算ではありません。金堂という建造物の立て直しだけでなく、写経を通じて人の心の救い、再建に取り組んだことでした。
写経巻数の推移
写経勧進の巻数は当初、はかばかしくありませんでした。しかし熱心に世の中に呼び掛けていくうちに累積数はどんどんと増えて行きました。
1968(昭和43)年6月末 :写経勧進開始
1968(昭和43)年12月末: 1万巻弱
1969(昭和44)年暮 : 5万巻
1971(昭和46)年半ば : 20万巻
1972(昭和47)年半ば : 35万巻
1973(昭和48)年8月 : 50万巻
1975(昭和50)年11月末:100万巻
当初の目標の100万巻は写経勧進を始めてから約7年半で達成しました。そしてその後も一般市民の薬師寺との心のつながりとして、また薬師寺伽藍復興への貢献の気持ちとして、写経は続けられました。納められた写経の累積数は2000(平成12)年に700万巻となりましたので、遠からず1000万巻になるように思います。
現在の写経
当初から行われています般若心経の写経の納経供養料は現在2000円になっています。また般若心経以外に3種類の写経があって、それぞれ供養料が異なります。
最も高額なのが東塔大修理特別写経で2巻セット1万円です。こちらは1巻が修理される東塔に、もう1巻は印度の仏蹟に安置されるとのことです。