薬師寺の写経を経験

私はだいぶ昔に京都の大覚寺で写経をしたことがありますが、実は薬師寺ではしたことがありません。昔した写経のことはすっかり忘れていますので、今回、初めて写経をするような気持ちで薬師寺へ行きました。雨が降る平日の午後でしたので、写経の会場は人影まばらでした。

お坊さんに言われるまま、丁子(ちょうじ)を口に入れて、体内を浄化し、香の焚かれている象の置物の香炉をまたいで体の外を綺麗にしました。

会場は写経の為に多くの机が並べてあります。大半は椅子席で、前の方に少しだけ座り机の席があります。私は写経をするならやはり正座してすべきだろうと考え、座り机のところに着席しました。これが大変な間違いであったことに後で気付きました。

写経開始

硯で墨をすり始めたのが午後1時58分。墨はすぐすれる種類の物のようで、筆で傍の紙に線を引いてみましたら、濃く黒い線が書けました。般若心経が書かれている紙を下に敷いて、半分透いて見える紙をその上に置き、文鎮で両方の紙を止めて文字を書き始めました。墨を付け過ぎたのか、文字の一画一画が滲んで大きくなってしまいます。付ける墨の量を少なくして書くと文字がかすれてきます。考えてみれば、年賀状を書く時に筆ペンは持っても、正式な筆を持つのは10年振りくらいですから、上手に書けるわけがありません。

写経継続

1行目を書いている途中で、正座している足が痺れてきました。なんとか我慢していたのですが、1行目を書き終わった時点で足を崩してあぐらをかきました。お坊さんに叱られるかなと思ったのですが何も言われませんでした。1行書くたびに正座とあぐらを繰り返しました。

写経をして行くと、あの有名な「色即是空」と言う文言が出てきました。続いて「空即是色」もありました。相反する言葉が次々と真理のように説かれていて、お経というものは分かりづらいなと日頃思っていることを再度実感しました。

お経には難しい文字があり、半透明の紙から下の手本を見ていると文字が正しく分からないことがあります。その時、机の上にお経の読み方が書いてある本が置いてあることに気付きました。親切な寺です。ページをめくって今書いているところを見ると、正しい文字が分かります。

般若心経は「不」とか「無」とかの文字が何度も出てきますので、後半になると、ちょっと上手に書けるようになった気がしました。良いお習字になります。

写経終了

経文を書き終えた後、願い事と住所、氏名を書いて写経終了です。時計を見ましたら、丁度午後3時でした。墨をすっていた時間を差し引くと1時間書いていたことになります。

書いた紙を写経会場の前方にある仏壇のところへ持って行き、焚かれている香にかざした後、仏前に供えました。供えられた写経は金堂に収蔵されることになっています。