唐招提寺の末寺

唐招提寺は東大寺や薬師寺などと同じく檀家がありません。しかし律宗の総本山ですから、末寺つまり本山に付属する寺はあります。いくつか末寺をあげますと、奈良市の伝香寺、奈良県五條市の講御堂寺、京都市の壬生寺、京都府八幡市の善法律寺などです。

あまり知られていない末寺で、非常に由緒が素晴らしいものとしては奈良県生駒市の竹林寺があります。近鉄生駒線の一分(いちぶ)駅から西の山の方へ向かったところ、第二阪奈道路近くにある寺です。

行基菩薩の眠る寺

竹林寺は行基菩薩が眠る寺です。行基菩薩は、関西を中心に民衆のために仏教布教、貧民救済、灌漑事業、架橋などを行い、民衆から非常に感謝され尊敬されました。また後年、東大寺の大仏を造る時の実質的な責任者にも任命されて活躍した人でもあります。

母思いの行基菩薩は、生駒山の東麓の草庵『生馬(いこま)仙房』で母への孝養をつくし、経典の研究にあたりました。母の逝去後もその地で修行と研究を行って自己を確立し、草庵を出て民衆の為の社会事業に取り組みました。行基菩薩は自分が死んだ時、母親の眠る『生馬仙房』に埋葬してくれるよう弟子に頼みました。この『生馬仙房』が現在の竹林寺です。

春の竹林寺

実は、私が竹林寺のことを知ったのは今年(2011年)の初めで、それまでは名前すら聞いたことがありませんでした。ある人のブログに投稿されたコメントがきっかけで、竹林寺の場所といわれを知りました。

春に竹林寺へ行きましたら、若い枝垂れ桜が今を盛りと咲き、建ってまだ年数があまり経っていない小さく綺麗な本堂がありました。宝形(方形)三間造りの簡素な本堂です。境内には蓮のものと思われる円い鉢が並べて置いてあります。お堂は閉まっていましたが、掲げてある『竹林寺』の額は中国仏教協会会長の趙樸初さんが書いたものでした。左手には大きめな庫裏があり、本堂と庫裏の間を通って裏山の方へ入っていきますと、狭い山道ながらよく手入れされていて、石仏があり、そこかしこにいろいろな花が咲いていました。

本堂前に戻り、丸太でできた長椅子に腰掛けてゆっくりと周りを見渡してみました。満開の桜やツツジ、そして光りに輝く緑の木々。山の中腹に、そこだけぽっかりと開かれたような落ち着いた空間です。心が癒される場所だなぁと感じました。

本堂に向かって右手の方へ行くと、赤い椿が道いっぱいに散っていて、行基菩薩の墓所がありました。「史跡行基墓」と彫られた石柱が立っています。行基菩薩の墓は、人の腰ぐらいの高さまで土が盛り上がって横長になっています。上にはクマザサが密生しています。ここに、母へ孝養をつくし、民衆のために種々の社会事業を行い、国家的な役割も果たして、菩薩と呼ばれた人が眠っているのです。