秋の竹林寺

秋は十三夜の夕方に竹林寺を訪れました。中秋の名月から約1ヶ月が経ち、秋も深まってきた感があります。寺の門柱には「月待ち会」と書かれた紙が貼ってあり、金木犀が良い香りを漂わせています。もう一本の門柱には月待ち会の内容が掲示されています。地元の人でしょうか、忙しそうにこれから始まるイベントの準備をしていました。本堂の扉は開け放たれ、立派な文殊菩薩像が見えます。秋の花々が飾られお酒なども供えられていました。

陽が落ちて周囲が暗くなり、庫裏で主婦のグループによる胡弓の演奏が始まりました。次に三味線があり、笛と小太鼓がありと、地元の愛好者の皆さんによって演じられて行きます。東日本大震災があった年であり、被災された人々に思いを寄せて、曲は時に哀愁を帯びるもの、時に元気づける賑やかなものが奏でられました。そして皆さんから慕われているように見受けられる男性の方が呼ばれ、朗々と黒田節を歌います。

途中の休憩時間には、庫裏の真ん中にお酒やジュース、それに芋などの煮物やおにぎりが運び込まれ、月待ち会に集まった六十人以上もの人に振舞われました。取り皿替わりに渡された物が、昔懐かしい筍の皮なので吃驚です。しばし御馳走になった後、お酒の入った大きめのお猪口を持って外へ出ましたら、空には満月前の月がこうこうと照っていました。

会の後半ではギターやエレクトーンが演奏されました。若い男性や女性が演奏します。庫裏の畳の上を、どなたかのお孫さんでしょうか、元気に駆け回っています。会の終わりには参加者全員が手を繋いでの合唱も行われ、大変盛り上がりました。

地元の人々に愛されている寺

このような会が生駒市有里(ありさと)を主体とする地元の人のボランティアで開催されていました。また、会場になった竹林寺そのものが無住の寺であり、地元の人々によって管理運営され、日々清掃されているのです。民衆の為につくした行基菩薩への感謝の気持ちが、それを可能にしているのかもしれません。

私は、人々の善意によってきれいに整備された境内を見、多くの人が普段の姿で月待ち会に集い歌っているのを聴いて、竹林寺は地元の人々に愛され、人々と心が深く結びついている寺だと感じました。そして、ここに寺の原点があるのではないかと思いました。