「お水取り」は悔過法要

東大寺二月堂の修二会いわゆる「お水取り」は、2月末までの準備期間を経て、3月1日から本行が行われています。「お水取り」の行事の本質は、民衆の犯した罪を懺悔し、仏様に許していただく法要です。

この法要を実施するためにお坊さんたちが二月堂へ登っていくのですが、その道明りの灯が有名な「お松明」です。3月1日から14日まで毎夜「お松明」が燃やされ、二月堂の舞台造りから火の粉がまき散らされます。そして12日の深夜、正確には13日の午前1時半頃には、二月堂本尊の十一面観世音菩薩に若水を汲んで捧げる、文字通りの「お水取り」が行われます。

「お水取り」への触れ方

本来が悔過法要である「お水取り」を楽しむという言い方は適切でないと思いますので、「お水取り」への触れ方ということで4つの方法を述べます。それらは@お水取り行事を実際に参拝・見学する、A奈良国立博物館で「お水取り」展を観る、B奈良市写真美術館で「入江泰吉の東大寺」展を観る、C本で読む、です。

実際に参拝・見学する

これに勝るものはないと思います。二月堂の舞台造りの上からお松明の火の粉が飛び散る様は圧巻です。しかし、参拝・見学者が非常に多いですので、混雑が比較的少ない平日に行くことをお奨めします。

なお平日であっても、大きな「籠松明」が燃やされる12日と、10本のお松明が短時間に二月堂へ登って並ぶ「尻付け松明」の14日は、身動きが出来ないほどの大混雑になりますから、避ける方が良いでしょう。どうしても12日や14日に行く場合は、大混雑を心して行ってください。大勢の人のために、夕方に行ってはお水取りの会場へ行けないでしょう。

「お水取り」展を観る

例年、お水取りの季節には奈良国立博物館で「お水取り」展が行われます。お水取りの行事内容がよく分かるものですから、これを鑑賞すると良いです。私が見学した時に、興味を引いた展示物は、

@二月堂の火災で一部燃え残った、本尊の観音様の光背、

Aお水取りの法要が行われる二月堂内部の状況展示、でした。

@は、多くの仏像の絵が線刻で光背に描かれていたことが印象的でした。

Aは、このような二月堂の中でお水取りの各種の法要行事が行われているのかと、想像できて良かったです。

 「お水取り」展は3月18日(日)まで開催されています。

「入江泰吉の東大寺」展を観る

奈良市高畑町にあります奈良市写真美術館では、今年(2012年)「入江泰吉の東大寺」展を開催しています。東大寺の四季折々の写真とともにお水取りの写真が数多く展示されていますので、お松明だけでない種々のお水取りの情景を観ることができます。「私は東大寺のお導きによって、写真家になれたのだ」と語った入江泰吉さんの素晴らしい写真をご覧になってください。

なお、「入江泰吉の東大寺」展は4月15日(日)までの開催です。

本で読む

お水取りについては多くの本が出されています。概略を把握するなら地元情報誌『月刊大和路ならら』のお水取り特集号や木村昭彦写真集『東大寺お水取り』などが、詳細を知りたいなら東京文化財研究所芸能部編『東大寺修二会の構成と所作』が良いと思います。

後者は、主な行事場所の二月堂内陣が女人禁制で立ち入りできないのに、女性の佐藤道子さんが大変な努力と関係者へのヒアリングをしてまとめた本です。上、中、下、別巻と分厚い本4冊でできており、これ以上「お水取り」の内容について詳述したものはないだろうと思われるものです。