好天の法隆寺参拝
法隆寺へ能度方丈と一緒に行ったときは良く晴れた日でした。奈良県庁職員のAさんは都合がつかないとのことで、法隆寺アイセンターというところにいる中国語通訳のボランティアの方に、Aさんが通訳を依頼しておいてくれました。朝の九時から昼過ぎまでたっぷり時間を取って法隆寺を参拝見学しました。鰯雲のある青空に五重塔がそびえてとても綺麗でした。
ここでも能度方丈は建物や仏像にはあまり注目せず、予想外のことに関心を示したり、質問をしてきたりしました。例えば、関心を示したものとしては、塔頭の屋根の材料とか、土塀の構築の仕方とかであり、質問では「日本では一般の人が僧侶になるのは簡単ですか?」とか、「日本の僧侶はどうして妻帯するようになったのですか?」などです。
瓦の寄進
法隆寺金堂では能度方丈が瓦の寄進を行いました。千円を寄付して瓦に文字を書き、寺に納めます。寺では堂塔の屋根の修復にその瓦を使うというものです。能度方丈が瓦に筆で書いた文字は、瓦の真ん中に縦に「中日友好 衆生 願」、衆生の両脇に「健康」と「平安」でした。
研修成果報告会
能度方丈が中国へ帰国する前に、今回の研修の成果報告会が開かれました。Aさんから電話をもらい、私も奈良県庁の会議室で行われた報告会に出席しました。報告会には海外研修員受け入れ部門である地域教育課の人々の他に、注目すべき人が二人いました。一人は松浦俊海師です。松浦俊海師は京都壬生寺の貫主ですが、元唐招提寺長老ですから能度方丈との繋がりがあることが分かります。もう一人は木津川市のSさんという女性で、雨に降られて困っていた能度方丈に親切にした人だそうです。言葉が通じなくても困った人に親切にする人がいて、その恩に感謝する人がいたのです。この話を聴いて、私は嬉しくなりました。
能度方丈の研修成果報告内容は、語学や文化交流だけでなく、学校等との交流や、老人ホーム訪問、ごみ処理施設を見学しての感想など多岐にわたりました。近畿一円の有名社寺を参拝するだけでなく、一週間、禅の修行にも参加しました。また、能度方丈は、文峰寺に無料の老人福祉施設を造りたいと思っているので、京都の壬生寺にある老人福祉施設に一泊体験入居したそうです。
多くの能度方丈の話の中で、私は、「鑑真和上から始まった縁がいろいろな形で繋がって、研修を受けさせていただいた」という言葉、そして「皆さんが今度は揚州に来てください。交流を深めましょう」という呼びかけが、とても印象に残りました。
能度方丈からのプレゼント
能度方丈が中国へ帰る日、私は急ぎの仕事があって見送りに行けませんでした。そうしましたら、その日、我が家にAMAZONから本が届いたのです。中国初のノーベル賞作家・莫言(モオイエン)氏の著書『蛙鳴(あめい)』で、能度方丈が贈ってくれたものでした。法隆寺へ行ったときの昼食時間にノーベル賞の話になり、その時はもう通訳の人がいませんでしたから、筆談で私が読んでみたい本として言ったことを覚えていてくれたのです。