ブログで多くの方が旅行記を書いています。そんな中で私が旅の思い出を書いて価値があるのかと二の足を踏みますが、「見る、味わう、感じる」の3点に主眼を置いて違いを出すようにしてみたいと思います。
ドイツのヴュルツブルク
ヴュルツブルクはドイツ中南部のフランケン地方の中心都市で、観光コースとして有名なロマンチック街道の北の起点にあたる町です。当初、訪問する積りはなかったのですが、大都市ミュンヘンとは雰囲気の違うところでゆっくりしたいと思い、急遽ガイドブックをめくってホテルを予約しました。そのためヴュルツブルクについてほとんど予備知識なしで行きました。
気持ちの良い眺め
前夜暗くなりかけた時に到着したホテルで目覚めると、快晴で気持ちの良い朝です。朝食はレストランに付随するテラスで食べようと思いました。庭からテラスにかけて木々があり花が咲いていて、遠くには古城のような建物が見えました。マリエンベルク要塞というものだそうです。
眺めが良く、風も爽やかで、とても気持ちが良かったのですが、食事を始めたところ蜂が飛んできました。主に生垣の花々のところへ蜜を吸いに来ているのですが、テーブルにも引切り無しに飛んできます。テラスレストランで物を食べようとすると何度も何度も蜂を追い払わなければなりません。とうとう蜂に負けて、途中で屋内のレストランへ移動しました。
食後、観光に出かけ、タクシーで先ほどテラスレストランから見たマリエンベルク要塞へ行きました。要塞は丘の頂にあるため、街が一望できます。タクシーの運転手さんが向こう側の丘の方から眺めるともっと綺麗に風景が見えると教えてくれましたので、そちらへも行ってみました。そうしましたら素晴らしい景色です。ブドウ畑がどこまでも続き、マイン川が流れ、鉄道の線路が伸びています。晴れて青い空と爽やかな風、そして広々とした眺め。心が洗われました。
シーボルト像
タクシーの運転手さんがヴュルツブルクはX線を発見したレントゲンの生まれた土地ですと教えてくれました。レントゲンにも興味を惹かれたのですが、ガイドブックにヴュルツブルクにはシーボルトの像があると書いてあったので、そこへ連れて行ってほしいと運転手さんに頼みました。「シーボルト像ってどこにあったかな?」と知らない感じです。タクシー会社の配車センターへ無線で問い合わせして、大体あのあたりと分かったのでしょう、発車しました。最初、ここですと車が止まったところは、運転手さんがよくよく辺りを見回して、ここではないと先の言葉を打ち消しました。何度か走ったり止まったりして、やっと「ここです。間違いない」と言う場所で車を降りました。
シーボルト像は木々が生い茂り、あまり手入れがされていないと思われる場所にありました。像の一部は鳥の落下物によってでしょうか、白く汚れています。日本で有名なシーボルトは、その生まれた地で忘れ去られ、こんな状態に像がなっているのかと驚きました。日本の近代医学の発展に貢献した一方で、日本の生物調査をし、国外への持ち出しを禁じられている日本地図を持ち出したとも言われるシーボルト。国と国とのはざまで生きた人間が、今こうした像となっていました。
辛口の白ワイン
見晴らしの良い丘の案内やシーボルト像探しで親しくなったタクシーの運転手さんに、お奨めの昼食場所へ連れて行ってもらいました。「肉と魚のどちらが希望ですか」と聞かれましたので、肉の店を頼みました。連れていかれたところは繁華街の裏通り的な場所で、半分が屋根あり、半分が屋根なしのレストランです。地元のドイツ人と思われる数組の中年夫婦のグループがにぎやかに食事をしています。
メニューを見て、手ごろな料金の料理と白ワインを注文しました。出てきたワインを見て吃驚。大きいワイングラス2個にワインがなみなみと注がれています。注文の仕方が悪くて意味が通じなかったのかと思いました。私はお酒、特にワインにはあまり強くないのですが、出された以上勿体ないので飲むしかないと腹を決めました。
一口飲みましたら、「美味しい!」と思いました。普通ドイツのワインは甘口が多いのですが、ここはスキッとした辛口のワインです。美味しいこともあって、出されたワインを全部飲みほし、昼からメロメロに酔ってしまいました。料理も良かったのですが、酔いでその味も忘れてしまいました。
後で分かったのですが、ここヴュルツブルクはフランケンワインの有名な産地とのことです。フランケンワインはフランケン地方で作られ、物理の実験で使うフラスコを平たくしたような緑色の瓶に入れられて販売されています。ずんぐりと丸みを帯びた瓶は「ボックスボイテル」と言われ、この男性的な辛口ワインはあの文豪ゲーテがとても好きだったとのことです。