知らなかった和鋼博物館
「今度、出雲へ行きます」と言ったら、島根県出身の友人のWさんから「安来市にある和鋼博物館へ行ってみると良い」とアドバイスされました。その博物館について私はまったく知らなかったのですが、Wさんのお奨めなら行ってみようと思い、JRの安来駅ホームに降り立ちました。
ホームから日立金属の看板が目に入りました。和鋼博物館は現在、安来市の管理ですが、以前は日立金属が運営をしていたのです。安来駅からタクシーで数分の広々とした敷地の中に和鋼博物館がありました。建物の中へ入ると、以前から名前だけ聞いていて一度見てみたいと思っていたものが、すぐ目の前にありました。蹈鞴(たたら)です。
蹈鞴(たたら)とケラ
蹈鞴(たたら)は足で踏んで空気を送る大きな「ふいご」で、砂鉄と木炭を混ぜて燃やし、鉄を作るものです。和鋼博物館のロビーともいうべきところにその模型が置いてあって、私も自分の両足で交互に踏んでみました。踏むというなどという生易しいものではなく、両手で上からの綱を掴み、片足ずつに体重をかけ力の限り踏ん張って、やっと踏み込める重たいものです。2、3回踏み込むだけで息が切れ、足が痛くなります。こんな重労働を長時間して、鉄を作っていたのかと驚いてしまいます。
館内ではビデオがとても印象に残りました。日本の戦国時代頃から広まったと言われる砂鉄の採取方法「鉄穴(かんな)流し」が再現され映像で見ることができました。棚田に水が張られ、その脇にある幅の狭い用水路の堰が切って落とされて、水が上から下へドッーと流れていきます。水と一緒に砂鉄と砂が流され、比重の差で砂鉄が川床に溜まっていくのでした。戦国時代より以前、古代では山から流れ出る自然の川で、同じ原理によって砂鉄を採っていたとのことです。
採取した砂鉄を木炭と一緒に炉に入れて燃やし、ケラという鋼のもとになる鉄を取り出します。和鋼博物館の庭にはこのケラがいくつも並べて置いてありました。今も島根県の山中では、冬の寒い時に炉に砂鉄と木炭をくべてケラを作り、日本刀などのもとになる良質の鋼を提供しています。
庭の美しい足立美術館
和鋼博物館を見学した後は、近年とみに有名になった足立美術館へ行きました。広い庭で、刈り込まれた樹木と白砂が非常に綺麗でした。借景になっていて遠くの山々が見え、青空も広がっていました。磨きこまれたガラス窓から見たのですが、庭に人がいず、とても美しかったです。
横山大観の作品を数多く収蔵・展示している美術館ですから絵にも感動して良いはずなのですが、私はあまりの庭の立派さに目を奪われ、絵などの美術品をまじまじと見てなかったような気がします。
至福のコーヒータイム
足立美術館の庭をすぐ傍で眺められる場所に喫茶コーナーがありました。ゆったりしたソファに座り、コーヒーを飲みました。一杯あたりの値段はかなり高かったですが、都会の狭い喫茶店では味わえない至福のコーヒータイムを過ごすことができました。