ローマの穴場、ボルゲーゼ美術館
本来、穴場と言うにはあたらない立派なボルゲーゼ美術館ですが、ローマは有名な見どころが多く、ともすれば日本では忘れられ易い場所です。広い公園の中にある美術館で、館内の絵や彫刻を観るには予約が必要です。
予約の煩わしさが日本人をこの美術館から足を遠のかせているのではないかと思いますが、行ってみて非常に良かったです。
大き過ぎず、ゆっくり鑑賞
ボルゲーゼ美術館の建物はボルゲーゼ枢機卿の別荘だったためか、ローマのバチカン美術館やフィレンツェのウフィツィ美術館のように巨大でありません。そのため良い美術品がかなりの点数あっても、疲れずに観ることができ、美術館全体が身近に感じられます。入館が予約制であり、混雑とは無縁でゆっくり鑑賞できるのが良かったです。
きれいな天井画が館内に入ってすぐ目に入ってきました。明るい感じがしました。ここにはラファエロその他の有名な画家の絵が多くあるのですが、私は美術に関してほとんど知識も鑑賞眼もないため、あまり記憶に残っていません。そんな中で強烈な印象を持ったのがベルニーニの彫刻『アポロンとダフネ』でした。
呆然と見つめたアポロンとダフネの像
『アポロンとダフネ』は大理石の彫刻で、大きさはほぼ等身大です。かつて高校の英語の先生がエロス(ローマ神話のキューピット)の「金の矢と鉛の矢」の話をしてくれたことを思い出します。
エロスに金の矢を射られた太陽神アポロンは恋に落ち、鉛の矢を射られた美しい娘のダフネは求愛を頑なに拒むようになります。川の神が父であるダフネは、アポロンに追いかけられて捕まりそうになったとき、アポロンから身を守るために父に叫び頼んで月桂樹に変身させてもらう話です。
白い二体の大理石像は、アポロンがダフネを捕まえた時に、ダフネの体が人間から月桂樹に変わっていく瞬間を表しています。ダフネの髪は月桂樹の葉になり、手の指は小枝と葉に変わり、足は地面に伸びた根となっていきます。樹木に変わってもアポロンを拒絶する、その凄さが眼前にありました。ダフネにそこまで拒否されるアポロンの驚きと悲しい気持ちも伝わってきます。
私が呆然と『アポロンとダフネ』の像を見つめていると、イギリス人と思える婦人が英語で「この像の話を知っていますか」と声をかけてきました。「ええ」とうなずいたら、その人も微笑み、像をまた観ていました。私は像を正面から観、脇から観、後ろから観と、周囲をぐるぐる回りながら30分ほど鑑賞していました。
トラステヴェレのピザは抜群の味
ボルゲーゼ美術館を出た後、公園をしばらく散策し、タクシーでトラステヴェレへ向かいました。トラステヴェレとは「テヴェレ川の向こう」の意味だそうで、東京で言えば浅草のような場所です。多くの飲食店が軒を連ねています。
私は事前情報がないときの店探しの方法、①良いにおいがしているか、②お客が多く入っているか、③美味しそうに食べているか、の3点をもとに店をみつけ、テラスの席につきました。注文したのはイタリアワイン、ピザのマルゲリータ、ペンネ・アラビアータです。
ワインで喉を潤しているとピザが運ばれてきました。薄焼きピザです。日本の一般的なピザのように分厚いものではなく、生地が薄くて柔らかく、チーズとトマトソースの味が染み込んで抜群の味でした。ペンネ・アラビアータもペン先状のパスタがピリ辛でとても美味しかったです。