2割引の格安宿泊券

2011年の紀伊半島大水害から早期に復興をしていただこうと、奈良県が奈良県南部地域に宿泊観光客を誘う「プレミアム宿泊旅行券」を発行しています。

これは10,000円の宿泊旅行券が8,000円で購入できるというもので、旅館等での宿泊代や飲み物代などに使えます。2割引という今どき滅多にお目にかかれない格安宿泊券を事前に購入して旅に行きました。

一般道を走る長距離定期バス

近鉄大阪線の大和八木駅から南紀のJRの新宮駅まで、高速道路を走らない定期バスとしては日本一長い路線を走るバスがあります。時刻表によれば全走行時間は6時間29分です。6時間半をわずか1分切っていることにユーモアを感じます。

私は疲れを少なくするために乗車時間を短くしようと思い、八木駅より南の五條市バスセンターからこのバスに乗って、十津川温泉で降りることにしました。バスの車内に表示された十津川温泉までの所要時間は丁度3時間でした。

バスセンターを出発したバスは五條市を通り抜け、曲がりくねった道を走っていきます。ところどころに緑の山が上の方から抉られて茶色の肌をさらしているのが見えました。土砂崩れの跡が今も多く残っているのです。

谷瀬の吊り橋

十津川温泉までの途中に「谷瀬(たにせ)の吊り橋」があり、ここでバスが小休止となります。乗客の皆が降りて、吊り橋を観に行ったり、渡ったりします。谷瀬の吊り橋は鉄線でできていて、長さが約300メートル、谷底からの高さが約50メートルあります。

吊り橋の中ほどは板が貼ってありますが、両サイドは板がなく、金網の隙間から50メートル下の十津川が見えます。バッグを肩に掛けカメラ片手に渡り始めたのですが、人と行き交う時に体のバランスが取りづらく、ちょっと怖かったです。以前に渡ろうとして、怖くて渡れなかった徳島県の祖谷(いや)の「かずら橋」を思い出しました。

十津川温泉の源泉、上湯温泉

十津川村は日本で初めて源泉かけ流しを宣言した村です。村内に湯泉地(とうせんじ)温泉、十津川(とつかわ)温泉、上湯(かみゆ)温泉のどの温泉施設も源泉かけ流しとなっています。私が今回宿泊したのは、十津川温泉から細い県道を車で約20分の上湯温泉です。迎えの車の運転手さんが教えてくれたことによると、十津川温泉は上湯温泉からお湯を引いているのだそうです。

宿泊した旅館は神湯荘。上湯温泉の神湯荘ですから、少し紛らわしいです。川原の露天風呂は先の大雨で使えなくなってしまったとのことですが、その他に貸し切り露天風呂が4つあり、私はそのうちの3つと内風呂に入りました。貸し切りと行っても、入り口の扉のところに「入浴中」の札を掛けておくだけです。湯は透明で、山の夕暮れの風情とともに、気持ちをゆったりとさせてくれます。また、夜中に入った露天風呂はランプが灯されていて、一層ひなびた感じがしました。

夕食には天然鮎

夕食は量が多過ぎず、少な過ぎず、丁度良かったです。小さな「めはりずし」とサンマずし、鮎の瀬越し、鮎の塩焼き、山菜の天ぷら、イノブタの小鍋などが出ました。鮎は当然天然の鮎で、色が黒っぽく、身が引き締まって、良い香りがしました。都会では高価過ぎて食べられない自然の味でした。

ビールとお酒を少し飲み、夜中に風呂上りの缶ビールを飲んだのですが、翌日の宿泊費精算は1人10,000円(実質8,000円)のプレミアム宿泊旅行券のみで間に合い、追加支払いは1円も必要無しでした。