●棟方志功の版画が鑑賞できる茶房「長谷路」

長谷山口坐神社と法起院とのほぼ中間に茶房「長谷路(はせじ)」があります。その門構えは重厚で、主屋である隣の酒店の建物などと連なって、国の登録有形文化財になっています。門をくぐり中庭の庭石を歩いていくと茶房があり、美味しいコーヒーが飲めます。

一服した後、隣接する版画土蔵館を観に行きました。狭く急な階段を上って土蔵の二階へ行くと、そこは八畳くらいのさほど広くない一間で、四方の壁面に版画が数十点展示されています。展示紹介文は名刺大の大きさの紙に手で書いてあります。蔵の二階にたった一人でいて版画と説明文を眺めていたら、自分のコレクションを隠れ部屋で愛でているような錯覚に捕らわれました。

展示されている版画は、地元・初瀬出身の谷中安規(たになかやすのり)のもの、谷中が交流していた棟方志功のもの、猫の絵が親しまれている大野隆司(おおのたかし)のもの、木を輪切りにした硬い版木で繊細な版画を作る宮崎敬介のものです。

四人の作品はそれぞれに良かったですが、私は棟方志功の三尊像の版画が特に印象に残りました。とても温かい眼差しの三尊でした。

なお、これは余談ですが、宮崎敬介はあのジブリのアニメで有名な宮崎駿(はやお)監督の息子さんです。

●他にも興味深いものあり

上記以外にも、長谷寺の界隈には興味深いものが沢山あります。いくつか例を挙げると、枝垂れ梅が植樹された與喜(よき)天満神社、手作り木工の「初瀬蔵」(はせくら)、ヨモギ餡の草餅の寶園堂(ほうえんどう)などです。

與喜天満神社は石段の数が多く登るのが大変ですが、数年後は石段の両側に綺麗な枝垂れ梅が咲き、匂いを嗅がせてくれるでしょう。「初瀬蔵」は木の柔らかい雰囲気を存分に発揮した行燈などの工芸品を製造販売しています。寶園堂は普通の草餅や焼き餅の他に、白餡にヨモギを入れたものでしょうか、ヨモギ餡の草餅を売っています。