館内は写真撮影禁止ですので、外観の写真と内部説明の文章を掲載します。

①法隆寺金堂壁画を体感する模写展示館

名古屋市東部の地下鉄「藤が丘」駅から東部丘陵線のリニアモーターカーに乗って「芸大通」駅で降り、10分ほど緩やかな坂道を登って行くと愛知県立芸術大学に到着します。ここには「法隆寺金堂壁画模写展示館」という建物があって、焼損前の状態の金堂壁画が模写で観られます。

館内の四方の壁面に、法隆寺金堂の外陣の大きな壁画12面と、内陣の小壁画20面の模写したものが展示されています。見学に来る人も少なく、シーンとしています。

長椅子に座り、阿弥陀浄土図や釈迦浄土図などの四方仏の絵や8面の菩薩の絵、そして20もの小壁画の飛天図に囲まれた空間に身を置いてみると、古代の人はどのような気持ちで仏教の世界に浸っていたのだろうかと想像が羽ばたきます。

模写は、愛知県立芸術大学の元日本画科主任教授で後に文化勲章を受章する片岡球子(かたおかたまこ)が中心となり、同大学の教官や卒業生たちと約16年の歳月をかけて完成させました。

展示館の中央には法隆寺金堂の模型があり、壁画がどの位置に描かれているのかが示してあります。また館の外側の通路には、金堂焼損時の大壁画12点全部の記録写真が掲示されていました。

なお、模写展示館は春秋(3~5月、9~11月)の概ね各月後半に一般公開されます。

②豊田市美術館で唐招提寺御影堂の障壁画を観る

名鉄の豊田市駅から徒歩15分の豊田市美術館で2017年6月11日(日)まで、唐招提寺御影堂の障壁画展が開催されています。鑑真和上坐像の厨子の絵を除いて、他のすべての障壁画が観られるため、足を運びました。

奈良の唐招提寺で御影堂が一般公開される開山忌の時でも、東山魁夷の描いた絵『山雲』や『揚州薫風』は正面から間近に観ることができないのですが、今回は全部の絵をしっかり観ることができました。『揚州薫風』全26面の襖絵は揚州の広々とした風景が感じられて、私にとって新しい発見でした。

展覧会には長野県信濃美術館の東山魁夷館から唐招提寺障壁画作成のために描かれたスケッチも展示されていて、完成した障壁画との違いが観られ興味深かったです。『黄山暁雲』のためのスケッチ「黄山旭日」は墨絵の黄山の絵に一つだけ太陽が朱色で描かれていました。両方の絵を観て、やはり太陽が描かれていないのに朝日が射しているように感じる墨絵の『黄山暁雲』は素晴らしいなと思いました。

全16面の襖絵『濤聲』は、絵を守るための照明の関係でしょうか、私のこれまでの印象と少し違って見えました。唐招提寺の御影堂の修理が完成したら、開山忌の一般公開の時に改めてこの絵を観てみる積りです。寺の中という雰囲気、そして自然光の中で観る障壁画は、美術館で観るのとは感じが異なるのかもしれないと思うからです。