④その後の大山誠一氏の見解と多くの歴史学者の認識

前述の反論が歴史学者からなされましたが、大山誠一氏は2009年、「学問的な根拠をあげた反論は皆無であり、すでに<聖徳太子は実在しない>という理解は学界内に定着したと言って良いと思う」と本に書いています。

これに対して多くの学者は、大山誠一氏が

・学術的反論を学術的反論と受け取らないこと。

・美術史学や考古学、日本の漢文に関する研究成果を無視していること。

・史料の取り扱いが恣意的であること。

などから、大山氏の非実在論を否定しています。

⑤非実在論に反論している学者と、現在の一般的理解:「実在した」

非実在論に反論している主な学者は、京大名誉教授の上田正昭氏、京産大教授の森博達氏、早大教授の大橋一章氏、駒大教授の石井公成氏、奈良県立図書情報館長の千田稔氏などです。

そして現在の一般的理解は、「『日本書紀』に描かれた聖徳太子は潤色されているが、実在し、冠位十二階の制定や遣隋使の派遣など業績を上げた」というものです。

⑥この問題で私が思ったこと

この問題を調べて私が思ったことは次の通りです。

 イ)テレビの影響力は大きい

   2008年11月にテレビで放映された番組「新説!?日本ミステリー」の『聖徳太子はいなかった!?』の影響力が大きかったようです。テレビ局は、視聴者の興味を引くよう面白い番組を作る傾向がありますから、視聴者は、放送される内容を正しく評価する力を持たなければいけないと思います。特に歴史ミステリー(不思議な興味深い歴史解釈)と正しい歴史認識は分けて考えることが必要でしょう。

 ロ)学術的論争への期待

   日本の歴史について研究の結果、いろいろな説が出てくるでしょうから、学者間では学術的な論争をしっかり行っていただきたいです。そして正しい歴史、納得いく説を私たちに提示していただきたいです。

 ハ)歴史は、過去を正しく学んで、将来に正しく役立てていくもの

   私はこのホームページで主に奈良のことを書いています。今回は、奈良、法隆寺、そして聖徳太子という関係から「聖徳太子はいなかった論」を取り上げました。

聖徳太子は日本の根幹を作ったとも言える人だけに、その人の存在はもとより、その考えや行なったことなどを正しく学び、将来に正しく役立てていきたいと思ったからです。