①薬師寺の食堂の再建が完成

一般に七堂伽藍とは、塔・金堂・講堂・鐘楼・経蔵・僧坊・食堂(じきどう)の7つの建物を言いますが、この度、奈良・西ノ京の薬師寺で食堂が再建されました。

薬師寺の伽藍復興は1976年(昭和51年)の金堂落慶から始まって、西塔・中門・玄奘三蔵院伽藍・大講堂・回廊などが次々と完成して、その間に僧坊や経蔵もでき、鐘楼も移築されました。今回の食堂が七堂伽藍の最後のものと言って良いでしょう。美しい伽藍が全貌を見せるのに、後は現在解体修理中の東塔が2020年(平成32年)に修理完成するのを待つのみとなりました。

②再建された食堂

再建された食堂は東西約41メートル、南北約16メートル、高さ約14メートルと大きいもので、大講堂の北側にあります。私が参拝した時には、境内に置いてある鉢植えの蓮が開花し始めていて、食堂の完成を喜んでいるようでした。

本来、食堂は僧侶が食事をする場所ですが、再建された食堂は多目的利用を考えて、内部が広い空間になっています。中央正面には食堂の本尊として「阿弥陀三尊浄土図」が田渕俊夫画伯によって描かれています。また正面後方から左右の合計14の壁面にまたがって、「仏教伝来の道と薬師寺」の絵が描かれています。一連の壁画を観ていると、遣唐使船で仏教が大陸へ学びに行かれ、大和へ戻ってきて、飛鳥川を遡り、畝傍山の麓へ、そして平城京へ来たことを感じさせられます。

③食堂での国際シンポジウム開催

 落慶法要が行われた1週間後、真新しい食堂で仏教に関する国際シンポジウムが開催されました。シンポジウムのタイトルは「南都学・北嶺学の世界--法会と仏道――」という難しそうなものでした。

シンポジウムは4部構成になっていて、第1部から第3部までの講演者は、日本女子大・龍谷大学・早稲田大学・ヴァージニア大学・フランス極東学院・東京大学の名誉教授や教授です。早稲田大学・ヴァージニア大学・フランス極東学院の講師は外国の人でした。

私はシンポジウム第4部の「東日本大震災と仏教――仏道の現代的意義――」を聴講しました。こちらの報告者兼パネルディスカッションのパネラーは、寺々の僧侶または宗教組織の関係者です。