ニ)高見昌良氏(天台宗務庁社会部社会課課長)
・宮城県石巻市にある寺院の住職が涙ながらにこういう話をされた。「自分の防災・備災への意識が高ければ。寺院を地域、檀信徒のコミュニティの核として、なにかあったらまず地域の人々が避難しに来てくれるような場所にできていれば。悔やんでも悔やみきれない。」
・そのような声を受け止めた天台宗は、今後発生するであろう大災害において、天台宗の寺院や僧侶を、地域の人々を救う重要な柱に育てるべく、「天台宗防災士育成研修会」を開催し、約100名の天台宗防災士を誕生させた。
・『天台宗防災マニュアル』を作成し、全寺院に配布すると共に、天台宗防災士が講師となり、講習会を実施して、全寺院の防災意識の向上を促した。
・災害発生から復興までの長い期間の中で、現代に生きる人々が、仏教者に求めるものは何であるか。犠牲になられた方々の菩提を弔うこと、残された方々の心のケアをすることであることは言うまでもない。
・しかし、仏教者には、災害が発生する前に、もっと一般の方々の為に出来うることがあるはず。それは、僧侶が檀信徒並びに地域の方々に対して日頃から接するなかで、つながりを築き上げ、事前に防災・備災の意識向上を啓発する中で、地域全体の防災力向上に寄与することではないか。
・各宗派の伝統、教え、儀式を身につけ、そこに、現代に生まれた新しい知識、技術などのノウハウを習得することで、現代の世の中に、より望まれる仏教者が生まれ、ひいては現代の仏道が生まれていくのではないか。
ホ)森本公穣師(華厳宗大本山東大寺執事)
・東日本大震災が発生した時、二月堂での修二会(お水取り)の法要で参籠しており、すぐには大震災のことを知らなかった。
・東大寺の大仏および大仏殿を江戸時代に再建した公慶上人は13歳の時に得度し、雨に濡れる大仏を見て、大仏と大仏殿の再建を誓った。そして20歳の時、お水取りで参籠していた二月堂が炎上してしまう。(大仏と大仏殿再建への思いはさらに深まった)
・若い時に衝撃的な出来事に会うと、人生に大きく影響する。
・良い意味で影響を感じられるよう、東大寺学園高等学校の学生と教員・保護者で被災地に行き、ボランティア活動を継続的に実施している。
⑤伽藍復興と心の復興
落慶法要のすぐ後に、食堂で仏教の国際シンポジウムを開催したことは、素晴らしいことだと思います。「物で栄えて、心で滅ぶ」ことがないようにというのが、薬師寺の伽藍復興に多大の貢献をした高田好胤和上のよく話していたことですが、それを地で行っています。
薬師寺の村上太胤・現管主は、食堂を報道陣に公開した時にこう話していました。「いろんな人達に仏法を学んでいただくために、このお堂は門戸を開放していきたい」
伽藍復興が心の復興に繋がっていくことを心から願っています。