①再建進む興福寺の中金堂
奈良の興福寺の伽藍は、もともと金堂が中央の空間を囲むように東側、北側、西側にそれぞれある三金堂方式です。北側の金堂は東西の金堂を両翼に配した形になっていて、伽藍の中心の建物であるためでしょうか、中金堂と呼ばれています。
中金堂は710年に創建されて以来、何度も被災して再建が繰り返されてきました。今回は創建を含めて8回目の建設となりますが、前回被災したのが1717年とのことですから約300年振りの再建です。
再建工事は外側の建物がほぼ出来上がり、現在は内部の工事に力が注がれているようです。完成は来年2018年秋の見込みです。
②中金堂の法相柱と柱絵
中金堂の内陣には、左側の柱に法相宗の高僧達の絵が描かれた「法相柱」というものがあったそうです。なぜ左側にだけあって右側にはなかったか、創建当時の絵はどんなものだったのか、などはよく分かりません。しかし、今回、いろいろと思いめぐらして、法相柱を蘇らそうということになりました。
奈良県出身の畠中光亨(はたなか こうきょう)画伯に法相柱の絵「柱絵」の制作を依頼していましたが、その絵が完成し、中金堂の柱に張り付けられる前に日本全国で順次展示公開されています。私は奈良・興福寺会館で行われた展示会へ、展示期間終了間近の日に拝観に行きました。
③柱絵に描かれた高僧たち
今回出来上がった法相柱の柱絵に描かれた高僧達は、法相宗の教えを確立し発展させてきた主な人達で、インドの無著菩薩(むじゃくぼさつ)・世親菩薩(せしんぼさつ)・護法論師(ごほうろんじ)・戒賢論師(かいけんろんじ)の4名、中国の玄奘三蔵・慈恩大師・淄洲大師(ししゅうだいし)・濮陽大師(ぼくようだいし)の4名、日本の玄昉僧正(げんぼうそうじょう)以下6名で合計14名です。
インドの4名はいずれも黄色い衣を身にまとっていますので分かり易いです。
無著菩薩は視線がうつむき加減で、興福寺・北円堂の木造無著立像と雰囲気的に通じるところがあります。また玄奘三蔵の歩いている姿や慈恩大師の精悍な目付きの絵は、薬師寺で観るそれぞれの人物画と特徴が似ていて、高僧が誰か推測できます。
なお、玄昉僧正を除き、それ以外の高僧についてどんな人なのかほとんど私は知りません。簡単にでも人物紹介の掲示板か説明書があれば有難かったなと思いました。
④今後の展示会予定
今後の展示会は以下の通り開催されます。
8月23日(水)~9月4日(月) 大阪高島屋
9月9日(土)~10月15日(日) 新潟市新津美術館
11月18日(土)~12月24日(日) 酒田市美術館