①ならまちにある興味深い寺社
奈良の観光エリアとして近年人気の「ならまち」に、南都七大寺の1つである元興寺があることは当HPの前々回の記事で述べましたが、ならまちには元興寺以外にも興味深い寺社が数多くあります。暑い夏の盛りに、それらを訪ねてみました。
②ユニークな取り組みをしている十輪院
十輪院は奈良市の繁華街の東向き商店街に寺の出張所とも言うべき「みんなのお寺」(十輪院仏教相談センター)を商業ビルの2階に開設し、お坊さんが駐在して仏事や人生相談などを受けています。相談料は10分までは無料、1時間は千円という看板が出ていて、これまで気になっていました。
今回、十輪院そのものを参拝しました。物珍しかったのは石仏龕(がん)です。龕とは仏像を納める厨子のことで、石造りの厨子の中に本尊の地蔵菩薩、その両脇に釈迦如来と弥勒菩薩が彫られていました。中央が釈迦如来でないのが興味深かったです。
なお、十輪院は毎朝の勤行を一般市民に公開して誰でも参加自由という取り組みや、月初めの日曜日には寺の清掃などをしてカレーライスを食べる会の開催などをしています。また、東京の神田神保町にも「みんなのお寺」(十輪院仏教相談センター)を開設しています。寺と一般市民を結び付けようと努力している寺がここにもあると思いました。
③薬師寺の高田好胤管主と関係深い法徳寺
ならまちを歩いていて偶然に法徳寺という寺を見つけました。場所は十輪院のすぐ近くです。寺の門には倍巌と書いてある表札がかかっていました。「ここにあったのか!」と、私は感動にも似た喜びを感じました。それと言うのも、法徳寺の前住職であった倍巌良舜師は、薬師寺を写経勧進で伽藍復興させた高田好胤師と大学入学以来の親友であり、好胤師が亡くなった時に密葬の導師を務めた人なのです。好胤師の親友の寺にでくわし、好胤師に再会したような気になったのです。
法徳寺の拝観は事前予約が必要でしたので、今回は門をくぐり境内に入っただけでした。次回は予約して参拝する積りです。
倍巌良舜師の著書に、高田好胤師との交流を綴った『好胤と倍巌』というものがあります。かつて読んだその本の「あとがき」に心に残る文が書いてありました。
「人間、高田好胤の信念と努力のあとを多くの人に知ってもらうことを、私は意義深いことと考えている。薬師寺の建物は立派に復興した。しかしその建物だけに目をうばわれ、心をうばわれてはならない。金堂をはじめ伽藍のいろいろな建物は何のためのものか。『仏心の種まき』のためのものなのだ。」
「今日の社会を見わたした時、改めて好胤が言った『物で栄えて心で亡ぶ』ことのないように私は祈っている」