①福祉に取り組んでいる宝山寺

帰路は自動車が走る一般道を歩いて下って行くことにしました。その理由は、宝山寺が宝山寺福祉事業団というものを作って社会福祉に積極的に取り組んでいることを知り、その場所を訪ねてみたいと思っていたからです。

最初に鉄筋コンクリート造りの大きな梅寿荘という老人ホームがありました。事業団の施設の1つです。そこで事業団の本部のあり場所を聞いて、さらに道を下って行くと事業団の施設の行先表示板があり、施設の配置図看板が建っていました。

行先表示板に従い、メインの道路から離れて細くなった道を行くと、そこは「福祉の郷」とも呼ぶべきエリアになっていました。種々の福祉施設の建物に囲まれ、私は感動し言葉が発せられませんでした。福祉事業団の法人本部、児童養護施設、老人の在宅介護支援センター、児童発達支援センター、乳児院、乳児保育園などです。

昭和21年(1946年)に宝山寺が生活困窮者生活援護施設を開設し、当初定員15名の世話をしたのがこの事業団の始まりとのことです。真言律宗は宗祖が興正菩薩と呼ばれる叡尊であり、その「苦しんでいる人を助ける」という思想が現代において実践されているのです。寺院と福祉との関係について非常に考えさせられました。

②歩き疲れて食べる「宝”多餅」

歩き疲れた私は生駒山ケーブルの軌道を横断して商店街に戻りました。商店街にある幾世屋という和菓子屋で「宝”多餅」を食べるためです。「ぼたもち」と読みます。このネーミングが素晴らしいと思いました。宝山寺へお参りして食べる餅。宝がいっぱいの幸せな餅。宝(ほう)に濁点が打ってあって「ぼ」と読むのが良いアイデアです。

宝”多餅は、普通の和菓子屋さんのおはぎの3個分以上あるのではと思う大きさで、食べ応えがあります。抹茶が振りかけてあるのが特徴で、餡の甘さが控えめなため、大きくても残さず食べられます。

宝”多餅を食べてお茶を飲みながら、宝山寺は深山幽谷の趣を持つ寺の顔と、宗祖の考えを引き継いで一所懸命に福祉に取り組んでいる寺の顔と、2つを持っているところだなぁと考えに耽りました。