①大神神社の摂社:狭井神社

檜原神社から山の辺の道を南へ歩いていきます。玄賓庵(げんぴあん)の前を過ぎ、狭井川を渡ると大神神社(おおみわじんじゃ)の摂社の狭井神社(さいじんじゃ)に到着です。立派な鳥居と拝殿があり、静かです。

拝殿に向かって左側へ回り込んでいったところに神水を汲める薬井戸があります。柄杓も置いてあって、柄杓を洗う水と汲む水は分けられています。水を口に含むと甘い感じがしました。この次はペットボトルを持参して神水を家への土産にしようと思いました。

狭井神社の境内にはご神体の三輪山へ登る唯一の道があります。私が今回狭井神社へ行った時には、先日の台風の影響で道の一部が崩れ、登拝禁止になっていましたが、現在は復旧して登拝できるようになりました。

②大美和の杜展望台からの眺め

狭井神社から西に少し登って行き、大美和の杜(おおみわのもり)展望台に出ました。ここからの眺めは素晴らしいです。耳成山や畝傍山が見え、大和盆地の遠く向こうには葛城山や金剛山が聳えています。陽は西に傾き、靄がかかった静寂な夕景が目の前に広がっていました。

目を右に向けていくと、大神神社の大きな一の鳥居が手前にあり、遠方には二上山の二つの頂があります。心がとても穏やかになる眺めでした。

③大神神社と祈りの言葉

大神神社は三輪明神とも呼ばれ、日本で最古の神社と言われています。祭神は国造りの神様であり、種々の産業を発展させると信じられています。なかでも製薬業や酒造業には厚く敬われています。

三輪山がご神体であるため、拝殿はあっても本殿はありません。私は、いつもは拝殿奥にある、鳥居が三つ並んで一体になった「三つ鳥居」の近くまで行って拝むのですが、今回は大神神社に到着したのが夕暮れに近かったため、拝殿の前で拝むことにしました。

二礼二拍手一礼をして、つぶっていた目を開けると、拝殿の片隅に説明版が設置されていることに気付きました。そこにはこんな文字が書いてありました。

「鎮魂詞(いのりのことば)

 幸魂(さきみたま) 奇魂(くしみたま)

 守給(まもりたま)へ 幸給(さきはへたま)へ

 三輪の神様には ご祈念のあと

 右のいのりの詞を 三回お唱え下さい」

この言葉を読んで、私はドキッとしました。祈りの言葉の本質のように感じたからです。幸魂(さきみたま)は「人に幸せを与える神霊であり、収穫をもたらす」と言われています。また、奇魂(くしみたま)は「不可思議な力によって人に幸せを与える神霊」とのことです。このことから私は、幸魂(さきみたま)は努力して幸せになること、奇魂(くしみたま)は不可思議な力によって幸せになること、と理解できると思ったのです。

いろいろなことに努力して、願いが成就し、幸せになることを人々は望みます。また、努力ではどうにもならない場合、神様に不可思議な力で実現してもらい、幸せになれるよう人々は願います。それが宗教の祈りの言葉ではないかと考えさせられました。