① 「おてらおやつクラブ」とは
「おてらおやつクラブ」とは、寺へのお供え物を仏様からの「おすそわけ」として経済的に苦しい家庭へ贈る活動です。奈良県磯城郡(しきぐん)田原本町の安養寺が事務局となり、こどもをサポートしている支援団体の協力を得て、その活動を行っています。
お寺には時期によってお供え物が沢山あり、一方では、おやつは元より日々の食事にも困る家庭があります。そこで物の「ある」と「ない」を結び付けようと考えたのです。
現在では趣旨に賛同した全国の980寺院、393協力団体(2018年11月データ)が参加して、月間のべ約9,000人の子供へおやつや日用品を届けているそうです。
②「おてらおやつクラブ」の良いところ
活動が全国的に広がった理由は、供えられたものを「おすそわけ」するという無理のない形で参加ができること、およびおやつの送付先として母子家庭支援団体やこども食堂などを活動参加寺院に事務局が紹介していること、そしてWEBなど情報技術を活用して多くの発信をしていることだと私は考えます。
この取り組みでとても良いなぁと思うことは、おやつや日用品などの物資の支援と共に、「仏様から見守られていますよ」、「周りの人が気にしてくれていて独りじゃないですよ」、「困ったことがあったら相談に乗りますよ」というメッセージをおやつの贈り先に届けていることです。仏様からのおすそわけとして物心両面の支援に取り組んでいるのが素晴らしいです。
③2018年度のグッドデザイン賞大賞を受賞
この「おてらおやつクラブ」は2018年度のグッドデザイン大賞を受賞しました。
グッドデザイン賞は通常、企業の生産販売した商品などでデザイン(色、形など)の優れた物に授けられるものですが、物でない「おてらおやつクラブ」が「活動の意義とともに、既存の組織・人・もの・習慣をつなぎ直すだけで機能する仕組みの美しさが高く評価され」、受賞したのです。
世の中に対しての寺の新しい取り組みが社会的に認められ、さらに広く知られていくことは嬉しいことです。
④田原本町の安養寺
「おてらおやつクラブ」の活動を発想し、現在事務局として活動の中核を担っている田原本町の安養寺を訪ねてみました。
門の手前の掲示板には「おてらおやつクラブ」のポスターが貼られていて、隣には綺麗な文字で黒々と一言メッセージが書かれていました。
「百の理想より ひとつの実行」。
境内に入ると、清掃が行き届いていて気持ちが良いです。本堂の軒に吊るされている大きな赤い提灯が人を優しく招いているように見えました。