① 曲『イマジン』はジョン・レノンとオノ・ヨーコの共同制作
ビートルズのメンバーだったジョン・レノンのソロ作品『イマジン』が、奥さんのオノ・ヨーコ氏との共同制作であると公式にアメリカの音楽界で認められたのは、つい2年前の2017年のことです。
この『イマジン』が般若心経に通じるところがあるとよく言われています。
はたしてどうなのか調べ、考えてみました。
②ジョン・レノンは日本と禅に関心があった
ジョン・レノンはたびたび家族と日本を訪れ、日本文化に深く触れてインスピレーションを受け、禅に啓発されたそうです。
また、山本寛斎氏デザインによる、袖に「摩訶般若波羅蜜多心経」と刺繍されたジャンバーを着ている写真が残っています。
NHKの放送番組『100分de名著 般若心経』では、「(ジョン・レノン)は般若心経を心の支えにしていたと言われています」とナレーションで言っていました。
③イマジンの「NO」と般若心経の「無」
イマジンの歌詞には「no Heaven, No Hell, no countries,・・・【天国なんて無い(中略)、地獄なんて無い(中略)、国なんて無い(中略)、・・・】」と「NO」の文字が6回書かれています。
そして般若心経には「無」の文字が21回書かれています。
このことから、番組『100分de名著 般若心経』は般若心経とイマジンに相通ずるものがあると述べていました。
番組の講師である佐々木閑氏(花園大学教授で仏教学者)は、般若心経にこれだけ多くの無が使われているのは「すべての固定観念を無と捉え、リセットして新しく考え直す」ことの大切さを説いているのだと説明していました。
④番組の内容に違和感
私は佐々木閑氏の説明を聴いて違和感を覚えました。
その理由は2つあります。
1つは、番組放送より先に本として販売されていた同番組のテキストを読んでいたからです。
テキストには上記のような見解が印刷されていませんでした。
テキストでは、般若心経の否定の言葉が多いのは、「釈迦の仏教」を大乗仏教がある意味で否定し、乗り越えようとしたためと受け取れました。
なぜテキストと違う内容の番組放送だったのか、今もって不思議です。
2つめの理由は、イマジンの歌詞と般若心経ではその本質のところで違うように私は感じたためです。
確かに両方とも「NO」や「無」という否定語を多く使っていますが、イマジンはその詩を素直に読む限り「反戦と平和希求」の歌であり、般若心経は「この世の中のものは固定的なものでないから、その気になれば良いものに変われる」という考え、もしくは「釈迦の教えを乗り越えて神秘なものを拠り所として覚ろう、救われよう」という考えを説いているものだと思うのです。