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①京都府でありながら奈良から行き易い当尾

当尾(とうの)の里は京都府南部の木津川市加茂町にありますが、奈良市に隣接しているためJR奈良駅や近鉄奈良駅からバスで行くことが多いです。

また、昔はこの地区へ南都のお坊さんたちが出入りして修行をしたため、奈良との関わりが深いと言われています。

ちなみに当尾にある岩船寺(がんせんじ)や浄瑠璃寺(じょうるりじ)は現在も奈良の西大寺の末寺です。

紅葉の綺麗なこの時期に当尾の里の石仏と寺をめぐりに行きました。

当尾には鎌倉・室町時代を中心に造られた石仏が50体前後あるようですが、それの主なものを見る積りです。

②藪の中三尊磨崖仏

終点の浄瑠璃寺前でバスを降り、岩船寺方向へ石仏めぐりの道を歩いて行くと、すぐに岩に彫られた「藪の中三尊磨崖仏」がありました。

「藪の中」という変わった言葉が付けられているので、昔は藪の中にあった石仏なのでしょうか。

正面に地蔵菩薩立像(じぞうぼさつりゅうぞう)、向かって右に十一面観音立像、左の岩には阿弥陀如来坐像です。

説明版には鎌倉時代の中期に造られたと書いてあります。

地蔵菩薩立像の岩をよく見ると、どうも私には一地蔵だけでないような気がしました。

はっきり見える一地蔵の左側に、もう一体の地蔵菩薩の顔のような立体的な丸みが見え、さらに岩の面がすり減って顔の輪郭が平面の図のようになった三体がいるように見えたのです。

全部で五体の地蔵菩薩が当初彫られていたのではないかと感じられました。

しかし、これはどうも私の勝手な感じ方のようです。このように自由に推測できるのも石仏めぐりの面白さなのでしょう。

③石仏めぐりの道と阿弥陀如来坐像

石仏めぐりの道は山の中に入って行きます。道の案内表示板が要所々々にあって迷うことはありません。

道端の岩には「阿弥陀如来坐像」が彫られていました。

また、歩きながら眺める山や畑の風景は秋色に染まって綺麗です。

④わらい仏

古い時代に彫られたにも拘(かか)わらず、像の姿がくっきりとしている石仏もあります。

その一つが「わらい仏」です。石仏の彫られた岩の上に出っ張った岩があり、それが上からの雨垂れを防いだのでしょう。

石仏の微笑んだ表情がこちらの気持ちを和ませてくれます。

⑤岩船寺

岩船寺の山門の手前で右に折れ、石段を登って行くと岩船寺を守る神社(鎮守社)の白山神社と春日神社があります。

それほど大きくない本殿が二つ並んでいるのですが、その前の楓(かえで)が良かったです。

向かって左側の白山神社の前は黄葉、右の春日神社の前は紅葉で、二色の対比が鮮やかなのです。注意して見てみると、白山神社側の木の黄色い葉が枝の先端部分で微妙に朱色を滲ませ始めていました。

岩船寺ではやはり三重塔が美しかったです。山門手前から山門を額縁のようにして塔を見るのも好きですが、今回は境内で間近に見た三重塔が良かったです。

朱色の三重塔が紅葉の中に建っていて、塔と紅葉が美しさを相乗的に高めているように感じました。

また、裏山の方に登り、上から塔を見ると、塔の瓦屋根をバックにして細かい橙色の楓の葉が映えていました。

⑥圧巻の紅葉の楓と大門仏谷の如来形大磨崖仏

来た時とは別なルートで岩船寺から浄瑠璃寺の方向へ戻ってきました。

まもなく浄瑠璃寺へ着くという少し手前で右折し、どんどんと道を下って行きました。

その先に当尾(とうの)最大の磨崖仏があるのです。

素晴らしい楓(かえで)の大樹が見えてきました。

今、紅葉が盛りで、大樹は地面から1メートルくらいのところで幹が6、7本に分かれて捻じれ、上へと伸びています。その姿は圧巻です。

側には矢印表示板が立っていて「大門仏谷の如来形大磨崖仏」と書いてあります。

現在、磨崖仏へ行ける道はなく、谷のこちら側から向こう側の岩肌に彫られた石仏を見ます。

距離が離れていてもこれだけはっきり見えるのですから、大きな像なのでしょう。

如来形という呼称は、この石仏が阿弥陀如来なのか、弥勒如来なのか、はたまた釈迦如来なのか分からず、説が分かれていることから来ているようです。歩き疲れて痛くなった脚を折り曲げて、紅葉の隙間から磨崖仏を見、写真を撮りました。

⑦浄瑠璃寺

浄瑠璃寺は本堂に九体の阿弥陀如来がズラリと横一線に並んで安置されている寺です。

また、池の東側にある三重塔の薬師仏と西方浄土の阿弥陀仏との関係など、興味深い話が聴けて考えさせられる寺です。

しかし、今回は主に境内の紅葉を観て回りました。本堂側から見た池越しの三重塔。

岩船寺の三重塔に比べてこちらの塔は若干落ち着いて感じられます。

その理由は、周りの空間が広いためとも、紅葉した木だけでなく緑の木々が多いためとも考えられます。

南側にある休憩所で一休みしながら本堂の方へ目を向けると、紅葉の楓と本堂が静かな調和を見せていました。時間が止まって感じられました。

浄瑠璃寺の境内で変わった情景の写真を一枚撮りました。

猫が三匹集まって一体となり「温もりごっこ」をしていたのです。側に枯葉が一枚ありました。

写真
藪の中三尊
石仏めぐりの道と阿弥陀如来坐像
石仏めぐりの道から見る秋色の風景
わらい仏
白山・春日神社の楓
岩船寺の三重塔
塔の瓦屋根に映える楓
大門仏谷の此岸の楓の樹
大門仏谷の如来形大磨崖仏
浄瑠璃寺の庭園と三重塔
紅葉と浄瑠璃寺の本堂
温もりごっこ