はじめに
●奈良の寺々
・奈良には東大寺、法隆寺、薬師寺、唐招提寺など沢山の寺があります。
●奈良は仏都
・奈良(県)には多くの寺があり、素晴らしい仏像や芸術品が数多くあります。
・具体的に言いますと、国宝彫刻、これは仏像が大半ですが、全国136件中74件、割合にすると54パーセントが奈良にあります。また国宝建造物、これは大半が寺ですが、全国227件中64件、28パーセントが奈良にあり、全国の都道府県で一番多いです。
●私の奈良巡りの変化
・私の奈良巡りの変化を一言で言いますと、「観光から感動へ、そして『仏の教え』へ関心が移っていった」ということです。
・最初は観光気分で奈良巡りを始めました。
・寺々を訪ねているうちに、唐招提寺の鑑真和上、薬師寺関連で玄奘三蔵法師と高田好胤師、東大寺の行基菩薩と公慶上人、法隆寺の聖徳太子、などの生き方を知って感動しました。
・その人たちを行動へと突き動かした「仏の教え」とはどんなものだったのか?!そこへ関心が移っていきました。
・そこで、まずは読経や写経で身近な般若心経の意味を知りたいと思いました。
●本シリーズの内容
・次の7セクションに分けて般若心経の意味を述べるようにします。
§1:般若心経とはどんなものか?
§2.仏教の概略歴史(成立期)
§3.般若心経の意味が分からない理由
§4.般若心経を現代日本語に訳してみる
§5.日本で般若心経の意味が広く説明されてこなかった理由
§6.空と般若波羅蜜多と呪文(真言)の再考
§7.私たちにとっての般若心経の価値(添付:本シリーズのポイント)
§1.般若心経とはどんなものか?
●孫悟空も聞き、スティーブ・ジョブズも唱えた般若心経
・画像の写真は、左側が物語『西遊記』の主人公の孫悟空で、右側がアップル社の共同設立者の一人であるスティーブ・ジョブズです。
・ちなみに、孫悟空に扮している人は堺正章さんです。
・孫悟空が般若心経を聞いた、スティーブ・ジョブズが般若心経を唱えたということが、どうして言えるかと次の通りです。
●孫悟空のお師匠様
・『西遊記』で孫悟空のお師匠様は三蔵法師です。この三蔵法師のモデルと言われる人は、中国からインドへ仏教を学びに行った玄奘三蔵法師です。
・玄奘はインドへの求法の旅で困難に遭うと、般若心経を一心に唱えました。
・当時、鳩摩羅什という僧侶が漢訳した経典の般若心経があったのです。鳩摩羅什訳の経典の正式名称は『魔訶般若波羅蜜大明呪経』と言いますが、大明呪とは「素晴らしい呪文」という意味です。
・玄奘はインドから中国へ帰って仏教経典の漢訳をするわけですが、『般若心経』は鳩摩羅什訳を尊重して漢訳しました。鳩摩羅什訳の『般若心経』に助けてもらったという気持ちが強かったのだろうと思います。
●オークションで落札された『AppleⅠ』とスティーブ・ジョブズのメモ
・『AppleⅠ』はApple社が作った最初のコンピューターで、製造年は1976年です。この1976年製の完全に動作する『AppleⅠ』が、2012年のオークションにおいて約3,000万円で落札されました。
・同じ日のオークションで、スティーブ・ジョブズが19歳の時に書いた4枚のメモ用紙が約220万円で落札されました。
・メモ用紙の末尾には般若心経の呪文(真言、思いが叶う祈りの言葉)が英文で書いてありました。オークションを伝える記事に載っていた、そのメモの日本語訳は「進み、進み、超えていく。常に超えて進み、悟った者になっていく」です。先端技術で製品を開発していくジョブズのイメージにピッタリの訳のように思いました。
●ビートルズのジョン・レノンも般若心経に関心を持っていた
・ビートルズのジョン・レノンも般若心経に関心を持っていました。彼の着ているジャンバーの袖には「魔訶般若波羅蜜多心経」という文字が施されています。
●一般的な般若心経
・日本で一般に広まっている般若心経は玄奘が漢訳したものをベースにして、若干だけ玄奘訳とは異なるところがある「流布本」と言われるものです。
・般若心経の流布本の文章は画像の通りです。出だしの「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄(かんじざいぼさつ ぎょうじん はんにゃはらみたじ しょうけん ごうんかいくう どいっさいくやく)・・・」という文言は多くの人が聞いたことがあるのではないでしょうか。
・漢文のお経は、全く意味が分かりませんので、次に読み下し文を見てみましょう。
●般若心経の読み下し文
・般若心経の読み下し文の出だしは、「観自在菩薩 深般若波羅蜜多を行ずる時、五蘊は皆空なりと照見して、一切の苦厄を度したもう。・・・」です。読み下し文でも意味がほとんど分かりません。意味については追い追い考えていくとして、ここでは般若心経とはこんなものだという認識をしておけば良いと思います。
●般若心経の大本と小本
・実は般若心経には、全体を表した大きな本で「大本」と呼ばれるものと、その中の一部分を抜き出した「小本」と呼ばれるものがあります。一般に般若心経として親しまれているのは小本のことです。
・小本が本文部分で、大本は小本の前に前段部分を、小本の後に後段部分を配置したものです。前段部分は、どういう状況でこの教えが語られたか、という状況説明が書かれています。後段部分は、この教えが素晴らしいとの賛嘆の言葉が書かれています。
・教えが説かれる状況は、次のように説明されています。釈迦は山で瞑想(真理探究の思索)をしていました。周りには多くの弟子や菩薩たちがいました。そこの菩薩の一人である観音菩薩に、釈迦の弟子の中で智慧が一番優れている舎利子が「般若波羅蜜多」について尋ねます。なお、舎利子は舎利弗とも訳されている人で、阿弥陀経などでよく「シャリホー」と読み上げられています。
・後段の部分の、「教えの内容を賛嘆する」情景は、次のように描かれています。観音菩薩が舎利子に教えた内容を釈迦が素晴らしいと太鼓判を押します。そして多くの弟子や菩薩たちが、素晴らしい教えだと褒め称えます。
より詳しくは
・より詳しくお知りになりたい方は鏡清澄著『般若心経 私のお経の学び(1)』をご覧ください。
・オンラインショップのAMAZON、および一般書店(取り寄せ)で販売しています。
・発行所はデザインエッグ株式会社で、価格は2,222円(税込)です。