§7.私たちにとっての般若心経の価値

第1節 はじめに

ある寺でセミナーがあった時、セミナーの冒頭の司会者が「ここは寺なので、セミナーの前にお勤めをしましょう」と呼びかけました。

若いお坊さんが般若心経を唱え始めたら、セミナーのほとんどの受講生が経本もプリントも見ずに大きな声で それに和していきました。

私は、これほどまでに般若心経が身近なものになっているのだと、改めて認識しました。

そこで、般若心経が多くの人に親しまれ、大切にされている理由は何なのかを考えて見ました。

思い当たったのは次の三つです。

一つ目は「読経や写経の効用」です。

二つ目は「努力の大切さを教えていること」です。

三つ目は「祈りの強い力を説き、伝授していること」です。

私は「祈りには力がある」と思っています。望みを叶えたい時、物事を成し遂げようとする時、よほどの幸運でもない限り努力が絶対に必要です。

しかし、努力しても、努力しても、それでも物事が達成しない時、人は達成できますようにと神様や仏様に祈ります。

祈ることによって、再び努力する気持ちになります。

絶対的なものの前で謙虚になり、励まされて努力を継続して行くのです。

そのことが、物事の達成を引き寄せるように思います。

第2節 私たちにとって般若心経の価値

さて、今回のシリーズで般若心経の意味を説明してきました。

その要旨は、般若心経は末尾の「祈りの言葉」(呪文)を教えようとしたものであること。

そして祈りの言葉(羯諦羯諦波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆訶)は

「なろう、なろう、皆でなろう。皆が善い生き方をして、幸せになろう。思いは叶うぞ。うれしいなぁ!」

ということでした。

この般若心経の意味および、般若心経の呪文は「祈りの力」が最も凝縮されたものであることを考慮すると、

般若心経の要点は

私たちに前向きに生きる勇気を与えてくれること、

私たち皆が幸せになるのだと訴えていること、

であり、このことが私たちにとって般若心経の価値と言えます。

以上で、「般若心経の意味を知る」シリーズを終了します。

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ご覧くださいました皆様、および本『般若心経 私のお経の学び(1)』をご購読いただきました皆様に、お礼申し上げます。

なお、ご感想、ご意見などは下のコメント欄からお寄せいただければと思います。

付録

六波羅蜜多について

第6章でご案内した六波羅密多についてもう少し補足いたします。

1,般若心経の「般若波羅蜜多」とは「六波羅蜜多」のことであるとも言われています。

2,六波羅蜜多とは、仏になる前の修行者が取り組むべき6つの修行項目のことで、これの修行と実践が般若心経の勧める「善い生き方」です。その6項目とは、

   ①布施(ふせ)・・・・・・思いやる

   ②持戒(じかい)・・・・・戒めを守る

   ③忍辱(にんにく)・・・・耐える

   ④精進(しょうじん)・・・努力する

   ⑤禅定(ぜんじょう)・・ 心を安定させる

   ⑥智慧(ちえ)・・・・・・・ものごとを正しくとらえる

のことです。

「般若心経の意味を知る」シリーズのポイント

全7回にわたる「般若心経の意味を知る」のシリーズの要点を述べると以下の通りです。

①般若心経は、釈迦の直接の教えではなく、釈迦の人間救済の思想に立ち返って作られた大乗仏教の経典です。

②般若心経の意味が分からないのは、サンスクリット語から音での漢訳(音写)、内容の省略、サンスクリット語文法の理解不足などのためです。

③般若心経には「般若経のエッセンス」と「呪文の提示」という2通りの解釈があります。

④私の理解ですが、般若心経とは、「思いが叶う祈りの言葉」を伝えようとしたものです。

祈りの言葉の意味(私訳)は、「なろう、なろう、皆でなろう。皆が善い生き方をして、幸せになろう。思いは叶うぞ。うれしいなぁ!」です。

⑤般若心経は「思いを叶えるために、努力して、祈って、(努力して)、生きて行く」ことの大切さ教えています。

⑥般若心経は、皆で幸せになるのだと真理を訴えています。

より詳しくは

・より詳しくお知りになりたい方は鏡清澄著『般若心経 私のお経の学び(1)』をご覧ください。

・オンラインショップのAMAZON、および一般書店(取り寄せ)で販売しています。

・発行所はデザインエッグ株式会社で、価格は2,222円(税込)です。

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