「月刊大和路ならら」の紹介文と著者の思い
奈良のタウン情報誌「月刊大和路ならら」2月号のブックレビューのページで、拙著『迦陵頻伽 奈良に誓う』が紹介されました。ご紹介いただきありがとうございます。
ブックレビューの文を転載させていただきます。また、この折角の機会をお借りして、あらためまして私(著者)の思いを述べさせていただきます。
「月刊大和路ならら」2月号の紹介文をそのままの形で引用させていただきますと下記の通りです。
「月刊大和路ならら」2月号の紹介文
【現代の奈良を舞台にした小説というと、すぐ思い浮かんだのが万城目学『鹿男あをによし』だった。
出演女優を目当てにドラマ化されたものを見た限り、古都という素材を活かしつつも伝奇色の強いストーリーになっていた。
一方、『奈良に誓う』は同様な舞台設定をしつつも、特に奈良を描く上ではリアリズムに徹し、いわば奈良のよき案内にもなっているのが特色である。
ナビゲーター役を務めるのは主人公貴一。武者修行を兼ねた旅行会社を退職し、奈良市西ノ京で家業旅館業の見習いを始めたばかりの青年である。また、時系列的には途中から、陶器店を扱う会社に勤め東京で直営店を任されている女性あずさが登場し、貴一とナビを共にすることになる。同時に、彼女のビジネスがストーリーにアクセントを与えている。
NHK奈良放送局は「万葉ラブストーリー」として定期的に地元を舞台とした脚本を公募しドラマ化を続けているし、京阪名情報教育出版の「大和路ろまん文庫」の試みもある。こうした一連の動きは、現代の奈良を舞台にしたフィクションがジャンルとして定着しつつあることを示しているのかもしれない。
その一翼を担うべく、著者にもぜひ『奈良に誓う』の続編を期待したい。
著者の奈良への強い愛着は本書のいたるところから伝わってくるが、本書のみで語り尽くしているとは到底思えないからである。(佐藤明俊)】
この「月刊大和路ならら」の紹介文に加え、私(著者)の思いを下記のように紹介させていただきます。
「著者の思い」
今回のブックレビュー掲載を励みにさらなる創作活動を継続いたします。引き続きのご愛読を賜りますようお願いいたします。
【この本には迦陵頻伽が冠された『奈良に誓う』と『萬世同薫』の二編の中編小説が収められている。
『奈良に誓う』は東京の陶器店の若き女性店長あずさが主人公で、あずさの仕事、奈良市西ノ京の旅館の青年後継者である貴一との出会い、二人でめぐる奈良の自然と文化が描かれる。美しい四季折々の情景は心を浄化し、歴史に裏打ちされた文化は人の生き方を深化させていく。
『萬世同薫』は貴一が奈良・唐招提寺の開祖である鑑真和上と、和上に関係する人たちから、その精神性の高さを学んでいく話である。なかでも芭蕉が鑑真和上像を拝して詠んだ俳句「若葉して御めの雫ぬぐはばや」の新解釈は、和上と芭蕉の生き方を知れば頷けるものではないだろうか。
両編を通じて、素晴らしい場所である奈良と、奈良に育まれる若者の姿が描かれているが、「ところは違っても同じ思いを持つ人がいて、時は変わっても同じように薫る」という言葉は、人間への期待の熱いメッセージである。】
(『迦陵頻伽 奈良に誓う』の著者 鏡 清澄)